【「ねじまき時代」訳者のあとがきより(一部抜粋)】
 同じ時代に同じ文化で育った人間は共通の体験を持っていて、それはたとえ同じ国に生まれた人間であっても時代が異なると共有できない。
 ・・・(レトロなポップカルチャー的写真満載の原書を)買って読んでさらに驚いたことには、著者の青少年時代のカルチャーは僕ら日本人のそれと相通ずる部分が非常に多いという点であった。・・・
 ・・・著者の子供時代のノスタルジーのほとんどが、日本の60年代生まれの僕の琴線に触れるのである。中国語に直された『マイノリティレポート』とか、『時計仕掛けのオレンジ』とかの映画やアニメのタイトルの多くを、僕は何であるかがすぐにわかった(中略)。そうして僕が敬愛してやまない手塚治虫の偉大さを、著者が正しく理解していることにいたく感動し、この本は僕が訳して日本に紹介しなければならないという使命を感じたのである。
 日本人は中国古典に親しむことは多いが、現代の中国人のことをあまりにも知らなすぎる。かく言う僕も、中国に来る前は、中国人が映画『タイタニック』の話をしていて、「中国でアメリカ映画をやっているの?」と尋ねたくらいだ。この本で、中国の若者が、どんなものを子供の頃に見て育ってきたかを知った。また、アニメやテレビドラマや音楽を通して、日本や西洋の文化に大きく影響を受けていることも知った。・・・
【表紙帯より】
・・・手塚治虫、鉄道模型、ゲーセン、ニルヴァーナ、立体映画、切手集め、フィギュア、ブリキおもちゃ、etc 「もしあれほど早くアトムの身の上に人生のやるせなさを見ていなかったら、僕の生活は『ミッキーとドナルド』を起点にして、比較的快楽主義的な別の道を歩いていたのではないだろうか。」・・(本文より抜粋)
【データ】
訳者の同世代の日本人が70年代生れの現代中国人を理解するに最も身近な手引き書・適書として翻訳に取り組み発刊迄2年を要した図版満載の力作。
(タイトル「ねじまき時代-中国的Teen Spirit」、原著者「黎文」、発行日「'08/01/10初版」、発行「ゑゐ文社」、発売「星雲社」、\1260‐'08/01)